――まずは本対談の実現が決まったときのお気持ちからお聞かせください。
漆原:僕は、北山さんは正直デビュー前から知っているので…。
北山:そうなんですか!?
漆原:そうなんですよ。母親きっかけで少クラ(=音楽バラエティ番組『ザ少年倶楽部』)時代から。
北山:え〜、嬉しい!
漆原:なので今回はさすがに夢すぎるなと思いましたし、ありがたかったです。
北山:僕はアニメ業界でのタイアップが今回初めてなので、お会いできることが本当に嬉しいといいますか。あの世界観を作られていること自体に、まず相当なリスペクトを持っています。だから本当に今日は楽しみです!
漆原:こちらこそ! よろしくお願いします!
北山:よろしくお願いします!
――北山さんは漫画『桃源暗鬼』を読んだ際にどんな感想を抱きましたか?
北山:シンプルにめちゃめちゃ面白かったです! 鬼側と桃太郎側に「正義と悪」みたいなものがあるんですけど、一見、桃太郎側が悪だと見せておきながらも、実際はそうではなくなってきているなと。倒した桃太郎側にもちゃんと“過程”があるから、正義と悪が分からなくなりますし、全員にバックボーンがあるところがとても好きです。登場するキャラクターたちに共感する部分もありますよね。だから今回の『BACKLASH』では、「きっとこの登場人物はこういうことを思っているんだろうな」とか想像したり、セリフを全部読み直して“刺さる言葉”をメモしたりしながら、歌詞に落とし込ませていただきました。あとは皇后崎 迅と僕、誕生日が一緒なんですよ。
漆原:あれ? そうでしたっけ?
北山:9月17日なので。だから「おぉ!」とめちゃめちゃテンションが上がりました! もし今後コスプレをするんだったら、迅で挑戦してみたいです(笑)。
漆原:ピッタリかもしれないですね。でも俺は、北山さんはどちらかというと(花魁坂)京夜先生のほうが合いそうだなと思いました。
北山:本当ですか!?
漆原:あのちょっとチャラついた感じが…(笑)。
北山:それ、10代の頃のことを言ってます?(笑)
漆原:そのイメージが強いんです(笑)。
北山:ちなみに、キャラクターたちの誕生日って、どうやって決めているんですか?
漆原:最初はランダムだったんですけど、最近は誕生日が被りすぎると読者さんがお祝いイラストを描いてくださるのが大変だろうなと思い、バラけさせなきゃなと。読者さんが考えてくださったこともあるんですよ。「誕生日、何日がいいですか?」と聞いて、一番多かったやつを「じゃあこれで!」って。
北山:へぇ〜。だとすると、迅と一緒で嬉しいなぁ〜。
――そもそも『桃源暗鬼』の世界観が生まれたきっかけは何だったのでしょう?
漆原:“とにかく分かりやすく”を重視したくて、小学生でも読める漫画を描こうというのがまずありました。それまでは割と難しい漫画を描いていたんですけど、“自分のやれることをやろう!”と思って、分かりやすく、専門用語もあまり使わないようにしたんです。あとは“とにかくイケメンを描きたかった”ので、もうイケメンしか出さないぞ!と。その3つを守っている感じです。
北山:確かに、イケメンがいっぱい出てきますよね。
漆原:皆さんに推しを作っていただき、楽しんでもらいたいなと思っているので!
――昔話『桃太郎』を題材にしているところも非常に分かりやすいですよね。
漆原:土台に『桃太郎』を入れると「鬼と桃太郎が戦う」となるので、世界観や歴史の説明を省けるんです。そうしたら小学生も分かるだろうなという気持ちもありました。
北山:それで、設定は桃太郎が正義というのがありながらも、あえて見方は逆(=鬼側)にされたと?
漆原:そうですね。ただ最初は桃太郎側が主人公だったんですよ。でも、あまり面白くないなと感じて、「どちらかというと狩られる側のほうが主人公がいいだろう」と思い、そうしてみたら意外としっくりきたんです。
北山:なんかもうそれが“掴み(=フック)”になっていますよね。僕も「主人公は鬼なんだ!?」というところから始まりましたし。
――主人公の一ノ瀬四季にまつわるお話もぜひ伺いたいです。
漆原:四季は個人的に一番描きづらいキャラクターなんです……。主人公なので王道じゃなきゃいけないというのは最低限あるんですけど、王道というのは、どっちつかずにもなりかねないし、綺麗事をある程度言わなきゃいけない。そうだとすると、自分は四季みたいにあそこまで良いやつじゃないし、描いててなんかちょっと……。
北山:むず痒くなってしまう感じですか?
漆原:正直「こんなこと言える人間、いるのかよ〜」って思ってしまいます。
北山:でも、主人公がそういうことを言ってくれると刺さりますよね。
漆原:だからもう自分の憧れとして描こう!と思って。そこは最近吹っ切れました。
北山:四季は裏で泣くようなシーンもあったりするじゃないですか。それがとても人間らしいし、好きになるところなのかなと。もちろんこれからも実力をつけて、どんどん炎の色が変わったりもして、絶対にカッコよくなるとも思っています。
漆原:四季は一番人間だった期間が長いんです。ほかのキャラクターは早い段階から鬼として生きているのでちょっと倫理観がバグっていて、桃を殺めることに躊躇しないので、唯一、今北山さんがあげてくださったような人間性を描けるキャラクターでもあります。
北山:四季も今後どうなっていくのか楽しみだなぁ〜……。戦闘シーンにおいてもやっぱり「次は何を出すんだろう?」って気になりますし。
漆原:戦闘シーンの作画は大変なんですよ(苦笑)。
北山:やっぱりそうなんですか?
漆原:週刊誌でやることじゃないなと思ったりもして(笑)。
北山:(笑)。急に二丁に変わったりもしていますよね。
漆原:そうですね。いろいろとやっています。特に銃スタイルは絵面的に一回見たら飽きてしまうタイプといいますか。いろんな能力をいろんなかたちで出せるのなら遊び方はたくさんあるんですけど、四季は銃を出すだけの能力で。だからこそ、アングルやポージングをめちゃくちゃ気をつけて描かないと、読者さんに「これ前見たポーズだね」と思われてしまうんです。
――もし可能でしたら、今後の連載で注目してほしいところも教えていただけますか?
漆原:まあ、“死ぬキャラクター”はある程度決まっていますので、それを予想していただけたら……。
北山:えっ!? 死ぬキャラクターが決まっている?
漆原:主要キャラが複数人死ぬ予定なんですよ。
北山:ちょっと待ってくださいよ! 嫌だ! 悲しい!
漆原:でもその分、死ぬキャラクターにはすごくいい花道をちゃんと作ってあげるというのが作者の義務だと思っています。
北山:だとしても絶対にファンの皆さんも悲しみますよ!
漆原:そのとき読者さんからどんな反応をいただくのか……今からでも怖いです。
――ここからは第二期オープニング主題歌『BACKLASH』について触れていきたいです。北山さんはオファーをいだいたとき、いかがでしたか?
北山:アニメの主題歌をいつかやりたいなと思っていまして。それがこのタイミングで、しかも『桃源暗鬼』をすでに知っていたので、本当に嬉しくて光栄でした。
漆原:ありがとうございます。
北山:かつ、すごく責任感もありました。僕も漫画がアニメ化されたとき、戦闘シーンとかが動き出すから、とてもワクワクして観るタイプなんですけど、そこに乗る音楽ってめちゃめちゃ大事じゃないですか。だからそれを担当させていただけるというのが、本当にプレッシャーであり、嬉しくもあり。早く僕自身もオープニング映像を観たいです!(※本インタビュー時にはまだ完成していませんでした)
漆原:そうですね! 俺も観たいです。
――『BACKLASH』の制作裏話をお聞かせください。
北山:僕は仲間と楽曲を作っていまして。今回は、「こういうイメージだよね」「じゃあ僕が歌詞書くね」みたいなスタイルで、一緒にイメージしながら作っていきました。そんななかで、まず初めにベースラインを、ちょっとイメージを強くしようとなって。しかも、原作をまだ読まれていない方には少しネタバレになってしまうんですが、僕の中で矢颪(碇)が途中で覚醒したときに「おー!」と思ったこともあったんです。だから「あれ? このベースラインって、実は矢颪のバイクの雰囲気にとっても乗るかも?」ということで、冒頭にバイクのエンジン音をつけさせてもらいました。
漆原:あのエンジン音からの始まり、いいなと思いました!
北山:本当ですか!? よかった〜!
――そうして仲間と一緒に楽曲を作り上げていったのですね。
北山:そうです。『ザ少年倶楽部』を観てくださっていたのなら、もしかしたら分かるかもしれないんですけど、「Question?」(※バンドユニット)って分かります?
漆原:知っています!
北山:そのベース担当の藤家(和依)くんも参加しているんですよ。
漆原:マジっすか!?
北山:僕、藤家くんと全く同じ日にこの業界に入ったんです。それで“シンメ”としてずっと一緒にやっていて、今回の『BACKLASH』も、「『桃源暗鬼』のオープニングの話があるんだけど、一緒にコンペ出してみない?」と。藤家くんとああでもない、こうでもない、アレンジはこうだとか、ここは心臓音を入れる・入れないとか、そういうのをいろいろとディスカッションしました。そして藤家くんが「これ、今回はベースでいったほうがカッコいいかも」と言って、打ち合わせして、(仮音が)上がってきて、またやり取りして、じゃあこれでいこう!となったあとに、僕が歌詞を書いて音に乗せるというストーリーがありました。
漆原:「Question?」という名前が上がってビックリしています。すごく懐かしい……! あのバンドもカッコよかったですよね。
――漆原先生は北山さんがオープニング主題歌を担当されると聞いたとき、いかがでしたか?
漆原:先ほども言ったとおり、夢みたいでした。超プライベートな話になってしまうのですが、うちの母親が最期に推していたグループがキスマイ(=「Kis-My-Ft2」)さんだったんですよ。亡くなる寸前に病院に許可をいただいて、キスマイさんのアルバムを流したりもしました。そのとき、機械がいっぱい繋がれていて、意識はなかったんですけど手とかを握るとピッと数値が上がるものもつけていて。俺や息子が手を握ったとき以上に、キスマイさんの音楽を流したとき、数値がバーンと上がったんですよ。だからこの話をいただいたときに、「死んだあとでも親孝行ってできるんだな」と思いました。しかもうちの母親は、なんてったって北山さん推しでしたから!
北山:そうだったんですか! ありがとうございます!
漆原:最高の親孝行ができたので、こちらもありがとうございます!
北山:まさかそんなお話が聞けるとは……。音楽活動を続けててよかったです。
漆原:僕も漫画家を続けていてよかったです。
――漆原先生が実際に『BACKLASH』を聴いてみて、ここ素晴らしいなと感じたところは?
漆原:個人的には、サビの直前で一回曲調がスローになるところ。それまでが結構疾走感が強めだったので、あの一回ふっと止まる感じは聴いていて気持ちいいなと思いました。
北山:そこあえてなんです! 本当はBメロもバーッとそのままいっちゃうパターンもあったんですけど、「これってちょっと一回落とすという方向もいいかもね」と。だからそこが今回のサビへ行くためのミソになってくるといいますか……。
漆原:あそこがあるかないかで結構変わってくるんだろうなと感じて、そこが好きですね。
――続けてレコーディングの思い出話もお聞かせいただけますか?
北山:一度録ってハモリなどもいろいろ調整して聴いたときに、自分のなかでは納得しなくて、もう一回スタジオに入りました。だからいつものレコーディングの倍くらい時間をかけてやらせていただきました。普段も妥協はしていないんですけど、より熱意を込めて歌ったんです。
漆原:『桃源暗鬼』の作者としては、もう嬉しい限りです。
――最後に、本対談を振り返ってみての感想をお願いします。
北山:めちゃめちゃ楽しかったし面白かったんですけど、カメラが回っていないところで話を聞けたら絶対もっと面白い!(笑)
漆原:(笑)。
北山:だってもっと表に出せない裏話、聞きたいもん! とはいえ、もちろんキャラクターを描かれているときのエネルギーや思いというのは、漫画を読んでいて、そしてアニメを観ていて感じるんですけど、こうして話すとさらにそのディテールが上がるといいますか。きっとこうやって苦労されて描いているんだろうなとか、きっと寝てないで描いているんだろうなとか(笑)。深みがちょっと変わって、見方がまた変わると思いました。
漆原:俺はもう、本当に昔から知っていた北山さんとこうやって喋れていることも、だいぶすごいことだし。多分これも全部『桃源暗鬼』のおかげなので、嬉しい反面、あそこで諦めなくて本当によかったという気持ちになりました。しかも母親に親孝行をできましたし。何回も言いますけど、夢のような時間でした。
